手打そば 中川 (宝塚)

ハイレベルな自家製粉手打ち蕎麦は“特徴のないのが特徴”

 

日本には星の数ほど蕎麦屋があり、それこそ千差万別、ひとつとして同じ店はない。

にもかかわらず、自分の中に“基準となる蕎麦”は確かに存在する。

それは今までの経験にもとづく味、あるいは理想形なのかもしれない。

意識的にせよ無意識的にせよ、私たちはその“基準の蕎麦”を指針に目の前の蕎麦のうまいまずいを判断するのだと思う。

 

そんな自分の中の“基準の蕎麦”を思い起こさせる蕎麦に宝塚で出会った。

 

宝塚に行くのははじめて。

近くに所用がなければ当然スルーするようなところ。

宝塚の演劇になぞ1㍉の興味もないし。

 

目的の店は正確には宝塚の隣の宝塚南口駅にあって(なんだよその駅名)、徒歩で5分ぐらいのところにある。

 

f:id:takorii:20161213181728j:plain

 「自家製粉」「石臼挽き」「手打」 アピール感満載の暖簾が特徴的

 

清潔感のある店内は入って右手にバーのようなカウンター席、左側にテーブル席、20人ぐらいは収容できるかなりの規模。

 

愛想はいいんだけどどことなく事務的なお店の人の対応、温泉旅館にありそうな湯呑みで出される緑茶、天もりに鴨せいろ、玉子とじににしんそば、おかめと盛りだくさんの品書き。

 

はっきり言って、ミスったなと思いました。

被害を最小限にとどめて、あとはよそで腹ごしらえしようと思いました。

 

そんなこんなで一枚のもりそばを注文したのだった。

 

f:id:takorii:20161213191645j:plain

もり 864円

 

仕方なく頼んだはずのもりそば...。

 

と・こ・ろ・が!

悪くないのよ、これが。

 

割合は二八でいわゆる喉ごしやコシがあるタイプなんだけど、固茹でで太さもちょうどいい。

本当に手打ちかと疑ってしまうぐらい丁寧に打った蕎麦はとにかく食べやすい。

北海道滝川産の新そばの風味を存分に引き出している。

うれしい誤算にいまひとつな水切りも気にならないほどだ。

 

辛汁はそれだけ飲むと、みりんの甘さが強く、鰹の渋みも感じられ、こなれてないように思えるんだけど、蕎麦をつけるとこれがよく合う。

 

なんていうのかな。

「からに」や「和」など、ここ最近立て続けにクセの強い店に行ってるせいか、そういう店の蕎麦に比べると、全然とがったところがないし、主張するところもない。

悪く言えば個性がない。

 

しかし、蕎麦に個性が必要かと言えば、そんなことはないし、特徴のないのが特徴という蕎麦があったっていい。

ここの蕎麦は、いい意味で“アベレージ”なのだ。

 

もちろんざる蕎麦一枚ぐらいでは足りないので、かけも追加オーダー。

 

f:id:takorii:20161213194618j:plain

かけ 864円

 

これもうまい!

甘汁は鯖節を使ってないらしく酸味こそないが、濃すぎず薄すぎずほどよいバランス。

 

ついでに天ぷらも頼んでしまいました。

 

f:id:takorii:20161213200545j:plain

天付 810円

 

これも特筆すべき点はないんだけど、衣は軽くサクサク。

かけそばと一緒に食べてもイケる。

 

席から見える厨房では女性が茹でていたように見えたが、ひょっとしたらその女性が職人なのかもしれない。

丁寧で繊細な蕎麦なのもうなずける。

 

ハイレベルにまとまった“特徴のないのが特徴”の手打ちそばは、誰が食べてもうまいと思えるそんな一品だった。

 

この日はやってなかった田舎そばは次回のお楽しみにしておきましょうかね。

 

★★★☆☆

 

 訪問日:2016年12月6日