北野坂 こばやし (三宮)
出し巻きは蕎麦屋の実力を計る“ものさし”
“クリスマスイブを神戸で過ごすのはリア充か問題”はさておくとしまして、非リア充からの脱出をめざす私は、この日、クリスマスディナーをいただくために三宮の地に降り立ったのでした...。
しかし、そんな日でも蕎麦が食いたくなっちゃうんだから困りもの。
しかも、今回は友だちからの提案(めずらしく)ということで、 やってきましたこちらのお店。
例のグルメサイトではけっこう評判のこのお店。
通りから奥まったビルの1階にあるので、決して入りやすいとはいえないんだけど、すでに満席。
10分ほど待ってから席へ通された。
店内は清潔で席同士の間隔が広いから居心地がいい。
これは期待できそう。
と、思ったんだけど、いきなりなんだかなー。
なぜ同じものが二つ⁇
“もりそば”と“ざるそば”が別々になってるという、とっても斬新な品書き。
あのー、もりそばとざるそばは同じものなんですけど...とは言えませんでしたよ、さすがに。
お店の人に恐る恐る違いを尋ねると—
「ざるそばは海苔が乗ってます。」
内心(やっぱりな)と思いつつ、そういう方向性なのかと若干テンション下がり気味。
まずね、蕎麦に海苔を散らすというのは暴挙でしかないんだよ。
蕎麦みたいなかすかな風味を楽しむ食べ物に、磯の香プンプンの海苔をまぶしたらせっかくの蕎麦も台無しでしょ。
この時点で蕎麦のことをまったくわかってない。
今どきまともな蕎麦屋はやらないよ、こんなこと。
ともかく、あまり実力はないのかなと思ったんだけど、とりあえず出し巻きを注文して様子を見ることに。
玉子焼 900円
味はいいんだけどね。 出汁も効いてるし。
でも、なんか物足りないんだよな。
高めの値段がそう思わせてるのかも知れないけど、タンピン三色狙いに行って、三色つけられなかった感じと言えばわかってもらえ......ないか。
下手とは言わないけど、火の通しすぎで層になりかけてるし。
素人料理っぽさが抜けないといいますか。
まあ、「出汁巻き」じゃなくて「玉子焼」とあるからね。
でも、900円も取るんならもっと腕をあげないと。
この出し巻き...いや、玉子焼から察するにいろいろ中途半端な店っぽい。
で、今回注文したのは海苔抜きのざるそば、つまり、もりそばって何のこっちゃ?
もりそば 1000円
1000円とはこれまた強気の価格設定だけど、はっきり言って1000円の価値はないな。
まず、蕎麦の香りがまったくしない。
一応十割なんだけど、北海道産・福井産のブレンドってどうなのよ?
わざわざブレンドする理由が見当たらない。
福井の蕎麦粉に北海道産の蕎麦粉を混ぜるって、要するに蕎麦の質がよくないってことじゃん。
ああ、だから海苔が乗ってるざるそばがあるのか、と妙に納得してみたり。
茹で加減と水切りはいいんだけどね。
塩につけて食べると意外とうまかったので、塩で食べる蕎麦の配合なのかも。
でも、あくまでも蕎麦だからね。
なんかトンチンカンなんだよなあ。
辛汁の出来もイマイチ。
鰹の風味が強すぎて、濃厚なのに一本調子。
甘さを抑えているのはよかったけどね。
タネ物にいたっては失格。
ゆばそば 1300円
友だちが頼んだゆばそばを少しもらったんだけど、甘汁がまるっきりなってない。
鰹の風味しかしない。
うどんじゃないんだから。
香りの弱いここの蕎麦には合ってると言えるけど。
うーん、基本ができてませんな。
総評としましてはー
ウリがないというか特出すべきものはない。
全体的な味つけはよかったけど、この価格なら当たり前。
むしろ高すぎるぐらい。
なにより、この手の高級感のある店で肝心の蕎麦の質がよくないのは致命的。
この程度の店は世の中にいくらでもあるよ。
ざるそば一枚で1000円も取るならなおさら。
“蕎麦のレベルは出汁巻きのレベルに比例する”という自説の正しさがまた証明されちゃったかな。
それにしても、グルメサイトの評判は当てにならないね。
味はそこそこいいから、あまりおいしい蕎麦を食べたことがなくて、お金に余裕があればどうぞ。
★★★☆☆
訪問日:2016年12月24日